西條藩根元帳

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伊予西条藩では、江戸期に作成された分限帳が見当たりません。
現在確認出来る士族の名簿としては、明治・大正期に作成された士族名簿ばかりです。

ところが、1点だけ『西條藩根元帳』という江戸期に作成された史料があります。当史料は、天保期に作成が始まり、慶應2年まで記録が付け足されているもので、各藩士の歴代の履歴が記録されているものです。

今回のご依頼は基本200年調査ですが、この史料のお陰で調査目標である1800年前後どころか、松平西条藩成立の寛文10年(1670)よりさらに前の寛文2年(1662)、約360年前の記録が残されたご先祖様まで判明させることが出来ました。目標を超えた約160年はおまけです。

それだけでなく、歴代のご先祖様の詳細な履歴があり、なかには結構ドラマチックなエピソードを付け加えることも出来ました。

しかも、調査開始から3カ月弱、86日間で完成。
なかなか難航している調査がある一方で、このような調査は有難いことです。

本当はもっと早く終わっていたのですが、当史料の解読が大変困難で、この解読作業だけに実に多くの時間を取られてしまいました。

当史料の閲覧には事前予約が必要であり、その際に担当者の方から「閲覧は可能ですが、解読が大変難しいですよ。」と何度か念を押されてはいました。ただ、古文書解読にはそれなりの自信がありましたので「たいしたことはないだろう。」と高をくくっていましたが、担当者の方の言われたとおりでした。

文字の崩しがかなり強いということもありましたが、一番の問題はこれが原本ではなく、約40年前に撮影された写真をマイクロフィルムで見なければならない点です。

原本は、痛みが非常に酷い状態となったため、防虫・防湿処置を施され、木箱に封印されて閲覧することが出来なくなっています。その封印される前に撮影が行われたようなのですが、マイクロフィルムで見ると、原本の汚れや虫食いの跡が文字と同じ黒で見えてしまうため、それが文字を構成する線や点なのか、虫食いなどの線や点なのかの判別が難しいのです。ただでさえ文字の崩しが強いこともって、解読をより困難にしています。

さらに文字が消えかかっていたり、数文字がまとまって全く消えている箇所も散在しており、本来なら前後の文脈から推測出来るような文字も推測すら出来ないこともありました。

これまで数多くの古文書に接して参りましたが、これほど難解なものは初めてでした。それだけに、良い勉強をさせて頂きました。