超難解な調査実況その②

超難解な調査実況その①の続き

選定家督相続人について、自分の知識が完全であるという自信がありませんでしたので、改めて勉強し直してみました。正しい認識なしに、今回の調査は進みません。

選定家督相続人には、第一種と第二種があります。

第一種選定家督相続人については、明治民法の982条に規定されています。

982条
法定又ハ指定ノ家督相続人ナキ場合ニ於テ其家ニ被相続人ノ父アルトキハ父、父アラサルトキ又ハ父カ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ母、父母共ニアラサルトキ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ又ハ其意思ヲ表示スルコト能ハサルトキハ親族会ハ左ノ順序ニ従ヒ家族中ヨリ家督相続人ヲ選定ス
第一 配偶者但家女ナルトキ
第二 兄弟
第三 姉妹
第四 第一号ニ該当セサル配偶者
第五 兄弟姉妹ノ直系卑属

以上、第一種選定家督相続人とは、法定の推定家督相続人及び指定家督相続人がいない場合に、父母もしくは親族会が家族中より選定した者のことであり、まずは被相続人の父、次に母となります。父母ともいない場合、又は父母とも意思表示が出来ない場合には、親族会が選定しますが、上に記した第一号~第五号の順で決めることになります。

第二種選定家督相続人については、明治民法985条に規定されています。

985条
前条ノ規定ニ依リテ家督相続人タル者ナキトキハ親族会ハ被相続人ノ親族、家族、分家ノ戸主又ハ本家若クハ分家ノ家族中ヨリ家督相続人ヲ選定ス

前項ニ掲ケタル者ノ中ニ家督相続人タルヘキ者ナキトキハ親族会ハ他人ノ中ヨリ之ヲ選定ス

親族会ハ正当ノ事由アル場合ニ限リ前二項ノ規定ニ拘ハラス裁判所ノ許可ヲ得テ他人ヲ選定スルコトヲ得

以上、第二種選定相続人とは、上記の第一種選定家督相続人でさえも死亡・相続権の喪失・相続放棄などで存在しない場合、親族会が指定する家督相続人のことです。さらに第二種選定相続人もいないということになれば、その家は絶家となります。

この第二種選定家督相続人を選定する場合にも順序があります。
第一順位として、被相続人の家族・親族・分家の戸主・本家や分家の家族の中から適当な者を選定します。

第一順位の中に適当な者がいない場合やいたとしてもその者が相続放棄などをした場合は、第二順位として他人の中から選定します。

また、第一順位の者がいたとしても、正当な理由がある場合、親族会は裁判所の許可を得て、他人の中から選定することが出来るとあります。

以上、第一種・二種を併せ、被相続人と選定家督相続人との関係はかなり広い範囲であり、場合によっては“他人”の中からでも選定出来るということで、なかなか厄介なことです。

今回の調査の場合、被相続人と選定家督相続人の苗字が異なりますし、ご依頼人は「祖父は養子だった」と伝え聞いておられるとのことですので、第一種の982条の第一から四までは考慮しなくて良さそうなのですが、第五号の「兄弟姉妹ノ直系卑属」は現時点では否定する材料がありません。

また、第二種に於ける被相続人の親族である線も考えられますが、他人から選定されたのであればお手上げです。

まずは、ひとつひとつ確認していくしかありません。