超難解な調査実況その①

現在、これまでで最も難しいと思われる案件に悩まされています。
調査の障害になっているのは、選定家督相続人という制度です。

選定家督相続人とは、法定家督相続人も指定家督相続人(被相続人が遺言等で指定した者)もいない場合、旧民法下に規定された親族会によって、親族又は他人の中から選んで家督を相続させる者をいいます。

この選定家督相続人は養子とは異なるものであり、被相続人と相続人は直系尊属・卑属の関係にはなりません。つまり、選定家督相続人となった方より前の方を戸主とする戸籍を請求することが法律上出来ないということなのです。

今回の場合、ご依頼人の祖父の方(明治30年代出生)がこの選定家督相続人として家を継いでおられるのですが、その前戸主の方の除籍謄本を請求することが出来ません。結局、祖父の方を戸主とする大正4年式戸籍が請求出来る最終の戸籍となりました。

前戸主は、名前が前戸主欄に書かれているだけで、他に何ら情報はありません。
また、この前戸主は女性です。おそらく、ご夫婦だけの家で先に夫が亡くなられ、妻が家督を相続された後、その妻も相続人を指定することもなく亡くなられたということでしょう。

さらに不都合なことに、請求出来た祖父を戸主とする戸籍の本籍地は、この方が選定家督相続人になる前からの本籍地と同一であることです。つまり、この家の本来の本籍地も分からないということになります。

墓碑も祖父の方からしかありません。

そもそも、選定家督相続人である祖父の方と前戸主の女性との関係も不明です。何らかの親族関係になるのか、他人なのか?(選定家督相続人は他人でも選ばれる。)

結局、選定家督相続人となった祖父の方の前戸主として、おそらく明治初年生まれの女性の方の名前が分かっているだけで、古い行政記録や古文書の調査で必要とするそれ以前の男性の名前だけではなく、いったいどこに住んでおられたのかさえ分からないという条件で、調査を進めていかなければならないことになりました。

長く家系調査を行って参りましたが、これは初めてのケースです。

本件調査の進捗について、個人情報に留意しつつ、当ブログに書き込んでいこうと思います。このため、タイトルに「その①」を加えました。今後、その②、その③と続けて参ります。

何とか知恵を絞って調査を成功させることが出来るかも知れませんし、結果的に調査不能と判断せざるを得なくなるかも知れません。ブログにいつも調子の良いことばかり書き込むのではなく、このような苦戦必至の調査過程についても触れてみます。