「釣りをする坊ちゃん」弘中又一

山口県周南市湯野を流れる夜市川に沿ったサン・サンロードに「釣りをする坊ちゃん」という像があります。

当地区出身の弘中又一という人物の少年時代の像なのですが、夏目漱石が小説「坊ちゃん」のモデルとした方です。

又一は、明治6年に長州藩の重臣堅田氏の旧臣弘中伊亮・タメの長男として生まれ、同志社普通学校(同志社大学)を卒業後、山口県柳井市の柳井小学校の代用教員となり、その後明治28年5月、松山尋常中学校に赴任しました。

そこにいたのが夏目金之助、後の夏目漱石です。漱石は又一が赴任する前月の同年4月に英語教員として赴任してきており、1年後には松山を去って熊本県の第五高等学校の講師となっています。又一も同じ1年後に愛媛尋常中学校東予分校に転任しています。

つまり、二人が松山尋常中学校の同僚であった期間は僅か1年間だけだったわけですが、若い二人は友情を深めていたようです。

又一の回想録には当時のことを次のように書かれています。(原文ママ)

「一体、夏目はまじめな男でそこいら手あたり次第、遠慮えしゃくもなくモデルに失敬している。坊ちゃんにしても夏目自身でもあるし僕のことでもある。夏目と僕は毎日の出来事やら、失策を互いに話し合い、笑い興ずることが多かった。」

以上、知ったかぶって又一のことを書きましたが、又一の像が湯野に建てられていること自体は、今日の現地調査で初めて知ったことでした。

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